備忘録

大きな魚を、磯から、ルアーで。 釣りに魅せられた20歳の学生が挑んだ半年間の備忘録です。~令和元年4-9月~

母島の釣り③

最近海が悪く、予定していたオフショアが2回とも流れたり、地磯のいいポイントに入れなかったりとなかなか思うように釣りができていない。

加えて小笠原は早くも梅雨入りしたようで、連日の湿気に体もなかなかついてこない。

 

最近の釣果といえば、地磯で釣ったサメのみ。ワイルドレスポンス240fにがっつり食ってきた。

ベイトタックルを使用していたので、フッキングからファイトまでの流れの練習にはちょうど良かったけれど、流石にサメだとわかった時は落胆してしまった。

同行していただいた島の方も、GTなんかよりよっぽど確率低いよ、と苦笑い。

自分は過去に伊豆諸島でオキアミを餌にしたカゴ釣りでもサメを釣っていたりするので、何かサメとは不思議な縁があるのかもしれない。。

 

それはさておき、やっと海が落ち着いたので、お世話になっている漁師さんにオフショアに連れっていってもらった。 お店で出す魚を確保するのが主な目的。

まずは水深300m帯でオナガを狙う。

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いかにも”漁”といった感じの業務用電動リール

が、情けないことに自分は船酔いでダウン。アネロンを前日夜と出発前の2回飲んでも効果なし。やはり船での釣りはこれがあるから苦手。。

 

 

約2時間後、オナガ釣りを終え近海に帰ってきたところでなんとか船酔いから復活。(オナガは2時間で二本しか上がらないゲキ渋ぶりだったらしい)

近海では主にバラハタやアカハタを狙う。

冷凍ムロアジを餌にする釣りを勧められるも、自分はルアーへのこだわりが下手くそなりにあるのでジギングで。

が、これまたゲキ渋。ジギングはおろか、餌釣りでもまるで反応が得られない。

 

小笠原といえどやはり海は気まぐれ。だけどそこがまたたまらなく楽しい。

 

1時間ほどやって釣れたのはヒメダイと極小カンパチ(ショゴ)のみ。釣りの難しさを噛み締め、のんびりジグをシャクりながら時を過ごす。

 

 

が、いったい海はどこまで気まぐれなのか、突然自分のシャクっていたジグが何者かにひったくられる。

 

海面に突き刺さるロッド。悲鳴をあげるドラグ。

 

明らかに、デカすぎる

 

釣りをやっていて、糸の先に付いている何者かに、恐怖さえを覚えたのは初めてだった。

 

全身を使ってリフトしようとするも、糸の先にいる何者かは、海底付近で首を振るだけで、まるで上がってこない。

時たま頭が上を向いたタイミングで10mほど巻き上げられるが、またすぐに糸を引き出し、そいつは根へと向かっていく。

 

ファイト時間は30分を余裕で超え、自らの体がいうことを聞かなくなる。

走らせると一瞬で根に潜られるため、10キロを超えるドラグ値での長時間ファイト。

 

もうダメかもしれない

 

一瞬の気の緩みを、そいつは見逃さなかった。

 

ここぞとばかりに猛烈に根へと突っ込む何者かに、体力の限界に達していた自分は、なすすべなくのされるしかなかった。

 

ピタリと、竿先から生命感が消えた。

 

惨敗だった。

 

とても言葉では表現できないような思いが胸中を駆け巡る中、船の上でしばらく、呆然と立ち尽くす。

 

技術、体力、道具、そして何より、想像を絶する大自然に対する覚悟、全てが甘かった。足りなかった。

 

負けたものは仕方がない。

「ちょっとデカすぎましたね〜」

悔しさをグッと堪え、笑顔で船長さんと言葉を交わす。

 

悔しい

 

思えば、本気でこの感情とぶつかったのは初めてかもしれない。

 

今まで、部活で試合に負けようが、試験で失敗しようが、目上の人に叱られようが、ほとんど感じたことがなかった ”悔しい” という感情に、初めて出会えた気がする。

 

 

 

一つ、素敵な忘れ物ができてしまった。

大海原に忘れてきたそいつは、食物連鎖の頂点に立ち、今頃悠然と海底を泳いでいるのだろう。

正体はわからない。

サメかもしれないし、エイかもしれないし、夢の巨大魚かもしれない。

 

ただいつの日か、溟海に忘れてきたそいつともう一度勝負して、海面に姿を現したそいつに向かって

「どうだ、参ったか」

と、ありったけの笑顔で言ってやろうじゃないか。

そう心に決めて、海を後にした。

 

今日は疲れたので、明日は港でオジサンでも釣ってリフレッシュしようと思う。

 

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港でスプーンを投げるといろんな魚が遊んでくれます