備忘録

大きな魚を、磯から、ルアーで。 釣りに魅せられた20歳の学生が挑んだ半年間の備忘録です。~令和元年4-9月~

あとがき

 

 

全てを放り出し、釣りの旅に出たい。

 

 

大好きな釣りと、真正面から、本気で向き合いたい。

 

 

 

全ては、そんな馬鹿げた、けれどもちょっぴり夢の詰まった妄想から始まった。

 

 

 

釣りと出会ったのはもう10年も前、小学生の時。

当時お小遣いなんて貰えてなかった自分は、親に頭を下げ、店頭に並んでいる竿とリールの中で1番安いセットを買ってもらい、来る日も来る日も、ボロボロになるまで使い込んだ。

 

家の裏の畑で泥だらけになりながらミミズを捕まえて、近所の用水路に意気揚々と通って、ウキが沈み魚が掛かるのをただひたすらに楽しんだ。

 

毎日が、色づいていた。

 

 

高校生になって、勉強が忙しくなった。

運良く県内ではトップと呼ばれる進学校に合格出来たからには、大学受験でも、1番を目指してみたかった。

けれども大学受験は高校受験ほど甘くはなく、必然的に部活と勉強で手一杯。

趣味に割く時間など、当時の自分にはとてもじゃないが捻出しようがなかった。

 

 

高校に入り、釣りから離れて3年。

ついに入学した大学の新歓の釣りサークルのポスターに、心を鷲掴みにされた。

 

そこにあったのは、自分が今までやってきた釣りとは明らかに一線を画す、本気の釣りだった。

 

聞けば先輩たちは、夢の巨大魚をその手に収めるべく、北は北海道、南は与那国にまで足を運んでいると言うではないか。

 

 

釣りから離れ、勉強に没頭した末に入学した大学で、テレビの画面越し、遠い存在でしかなかった、規格外の大物と対峙する機会を、自分は与えられてしまった。

 

 

自分はなんて幸運なんだろう。

こんな夢のような機会、みすみす無駄にできるわけがない。

 

 

 

何も知らない、夢見るクソガキは心踊らせ、アルバイトに没頭しお金を稼ぎ、夏休み、先輩に連れられて夢の地へと足を踏み入れた。

 

 

18歳のクソガキは、その夢の地で、挫折を味わう。

 

これまで触れたことすらなかった太い竿、太い糸、大きくて重たいルアー。

全てが自分の扱える範疇を超えていた。

夢の巨大魚に、手が届く気がしなかった。

こんなに惨めで、悔しくて、自分の無力さを痛感するような機会は、今後の釣りにおいてもう訪れないだろう。

そう自分に言い聞かせ、翌年へのリベンジを誓った。

 

 

翌年、19歳の夏、昨年これ以上ないほど悔しい思いを強いられたガキは、さらなる屈辱を味わう。

 

 

往復4万円にも及ぶ交通費、片道26時間の大航海。

やっとの思いで捻出した時間と遠征費を費やし、挑んだ巨魚の楽園、小笠原。

 

次々と結果を出す仲間たちを横目に、ただひたすら、地獄のような惨めな時間を味わった。

自分は持っていない。

自分にはセンスがない。

大学受験まで、順風満帆な日々を過ごしていた自分にとって、あの2日間は、屈辱だった。

文字通り、地獄だった。

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遠征から帰ってきてからも、小笠原での無様な敗北は尾を引き、「そんなんだから釣れないんだよ」と、無神経な発言をされたことまであった。

 

正直あの時、釣りをやめようと思った。

 

 

こんな報われない、クソみたいな趣味投げ出して、無難に友達と飲み会に行き、無難に彼女と旅行して、、

"アツイ青春"なんてダサくてクサい、馬鹿げたフレーズなんかとっとと諦めて、無難な日常に逃げようとした。

 

 

だけど、、

あんな魚、テレビの画面でしか見たことなかったような魚、心の底から仲間が喜ぶ姿、、

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あんなの見せつけられて、途中で諦められるわけがなかった。

 

 

何もかも投げ出して、あの舞台にもう一度立ちたい。

将来のキャリアなんて、今はもうどうだっていい。

 

 

 

ーー気付けば単身、夢の舞台に足を踏み入れていた。

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正直、半年間かけて巨大魚を追いかけられる事に対する高揚感よりも、また何も成果を残せず心をへし折られるのではないか、やっぱりお前はセンスがないと周りに馬鹿にされるのではないか、そんな不安で頭はいっぱいだった。

 

実際島に来て最初の2ヶ月、何の成果も残せていない自分に対して、SNSで「何やってんの?」と皮肉られた事もあった。

 

うるさい

黙れ

じゃあお前出来んのか?

 

そんなドロドロした、器の小さい負の感情ばかりに囚われている自分が、心底情けなかった。

 

自分はこんなにも、安くて脆い存在だったのか。

何が夢の巨大魚だ。

何が巨魚の楽園だ。

頭の中では理解していたつもりだったが、結果しか見てくれない社会の理不尽さにいざ直面した時、その残酷さに、絶望した。

 

 

 

そんな暗闇の中、島の人たちの暖かさは、心の支えだった。

理想の田舎生活とまでは決して言えないけれど、釣りが大好きで島に来たという自分を多くの人が可愛がってくれたし、秘密のポイントの数々を、島の人たちは快く自分に教えてくれた。

軽トラの荷台に乗せてもらい、毎朝のように、一緒に釣りに連れて行ってくれた。

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そんな人達の前では、せめて、誠実でいたかった。

結果が出ない事に対する不安や、周囲のプレッシャーにへこたれる情けない姿ではなく、屈託のない笑顔を見せていたかった。

そして何より、こんな世間知らずのクソガキの、「大きな魚を釣りたい」というバカみたいな夢をバカにせず、親身に接してくれる島の人たちに、結果で答えたかった。

 

だから、諦めるわけにはいかなかった。

 

 

 

 

結果は、少しずつだけど、付いてきた。

 

結果が出るたびに、自分が釣ったかのように祝福してくれる島の人たちに、これまた心動かされた。

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もう周りの目なんて、どうだっていい。

ただ、この人達と、純粋に釣りを楽しみたい。

 

 

たどり着いたその思いは突然、花開いた。

見たことのない情景を、自分の目の前に運んできた。

文字通り、世界が変わった。

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どんなに努力しようと、報われない奴は報われない。

そして自分にはセンスがないから、報われるはずがない。

 

決して、そんな事はなかったんだ。

 

あの日の挫折も、惑いも、何もかも、全てはこの瞬間に繋がっていたんだ。

心の底から、そう思えた。

 

綺麗事かもしれない。というか、こんなのただの色眼鏡越しの綺麗事なのだろう。

だけど、綺麗事にだって綺麗事なりの価値が、感動があったっていいじゃないか。

それを信じ、そこに夢を見たっていいじゃないか。

心の底から、そう思えた。

 

 

大好きな事に目標を見出し、没頭する事は、恐ろしい。

求めれば求めるほど、現実と理想のギャップが、残酷なまでに浮き彫りになる。

報われないまま一生を終える人も世の中にはたくさんいる事もわきまえているつもりだ。

 

けれど、挑まないと、信じないと報われない事も、陳腐だけど、まぎれもない事実だ。真実だ。

だから自分は、勇気を振り絞り、信じてみた。

頂から見える景色がどんなものなのか、見てみたかった。

そしてこの春、右も左もわからない広大な裾野に立ち、1人、1歩ずつ1歩ずつ、頂を目指した。

 

 

これは、そんな綺麗事を信じ、挑んだ1人のクソガキの挑戦記だ。

釣りに出会い、魅せられ、寝食も忘れるほど没頭してしまった20歳のガキの釣行記だ。

大きな魚を、磯から。

そんなダイナミックで、ロマン溢れる、夢の詰まった釣りに心奪われた1人の人間の奮闘記だ。

 

読む人によっては、1人の少年のサクセスストーリーに見えるかもしれない。

読む人によっては、理解しがたい、ただイタイだけの文字の羅列に見えるかもしれない。

 

まあそんな事はどうだっていい。

ただ、半年間綴ってきた苦悩と歓びを、1人でも多くの夢見るバカな釣り人に届けられたらな。

そう心の片隅で期待して、9月29日、夢の島に別れを告げた。


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2019.9/30

おがさわら丸、朝の船内放送で目が覚めた。

眠気まなこをこすりデッキに出ると、秋の始まりと旅の終わりを告げるかのように、少し冷たくて、切ない空気が肌を刺した。

水平線から顔を出したばかりの朝日が、澄み切った空に、乱反射する。

明日からは、止まっていた日常が、半年ぶりに動き出す。

この景色を見るのはまた来年以降だな。

込み上げてくるものを胸の奥にそっとしまい、20歳の釣りバカの夢釣行記は幕を閉じる。

 

 

令和元年9月30日

おがさわら丸船内より

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母島の釣り⑰

半年間で12回にも及んだ沖磯釣行。

 

GT、キハダ、イソマグロという海域3主役に魅せられ、挑んだ半年間。

未練がないと言ったら嘘になるけれど、それは未練と呼ぶには少し贅沢すぎるものなのだろう。

 

 

去年の夏の挫折から半年、島の釣り人の方達に声をかけてもらって再スタートした沖磯チャレンジ。

両手じゃ数えきれないほど悔しい敗北を喫したというのに、報われた数は片手で数えられるほど。

だけどそれがこの海域の、磯大物釣りの醍醐味で、宿命なのだろう。

 

 

自分はこの海で、この半年間で、深淵を覗けたのだろうか。

大好きな釣りと、真摯に向き合えたのだろうか。

幼い頃からの思いを、形にして残すことが出来たのだろうか。

 

珍しくそんな自問自答に浸かりながら、荷物をまとめ、5時に港へと足を運んだ。

 

 

 

 

9/22

小潮

満潮…13:32

干潮…5:48

 

「最後だからもう一回沖磯行くか?」

 

バイト先の店主が、親切にもそう声をかけてくれたのがきっかけで、半年間を締めくくる沖磯釣行はなんと無料で、しかも初の母島釣り部全員集合での記念釣行となった。

 

といっても、つい数日前にも沖磯には乗っており、冷静沈着、淡々と船に荷物を積み込む。

 

5時出船。

西からの2メートルを超えるウネリをものともせず、船は雄々しく東を目指す。

 

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裏高根、東崎、ウエントロの離れ、石門崎…

本島東に位置するポイントを順に見てまわるも、どこもウネリをもろに被っており渡礁は厳しい状況。

船に激しく揺られ、リバース寸前のIさん。

これは湾内の地磯になるだろうなと腹をくくりつつ、最後に訪れた島北東部の離れ磯、臥牛角でまさかのOKサイン。

乗れる磯なんてないだろうと前日から覚悟を決めていたものの、結局乗ったのは島屈指の1級磯。

なんとラッキーな事だろう。

 

荷物を高いところにまとめ、釣り開始。

時折危険な波が足元を洗い気が気でない…なんて思っていると、早速Mさんの自作ルアー、通称モリペンに大型魚がバイト!

惜しくもミスバイトだったものの、幸先は悪くない。

 

ファーストフィッシュはIさん。

先日発売されたボアーという大型ミノーでバラクーダをキャッチ。

この魚が1級磯で釣れるのは潮が弛んでいる時間帯である証拠だ。

 

その後はなかなか反応を得られないまま、次第に力強さを増すウネリに大苦戦。

海面が激しく上下しているせいで、潮の流れをなかなか読むことができない。

 

潮を読めないならばと、自分はミノーにルアーチェンジして、足元のサラシを丹念に探っていく。

狙いはサラシが好きと言われるカスミアジ。

 

左右からのウネリが磯際で砕け、いかにもというサラシが沖に払い出している箇所をネチネチ探っていると、待望のヒット!

 

ヒットと同時に走る事なく、その場でゴンゴンと首を振っていたので、中型のカスミアジだと思い強引に勝負をかけると、海面に浮いてきたのは予想に反してまさかのキハダ。

 

ウネリにより磯際からかなり後退してのファイトだったため、取り込みは肝を冷やしたが、ちょうど良いセットが入ってきたのでそのまま波に乗せぶっこ抜き。

 

15キロ。

決して良いコンディションとは言えない磯で引き出せた回遊魚に歓喜した。

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思えばこっちに来て初めての沖磯で釣ったのもキハダだった。

8.5キロと、決して大きいとは言えないキメジサイズに翻弄されながら、なんとかキャッチしたあの日と比べると、我ながら、少しは成長出来たのだろう。

 

 

余談だが、人と魚とには相性みたいなものがあると自分は思っていて、自分はどうやらキハダと相性が良いらしい。

同じように磯に行っても、なぜか10キロを超えるキハダは自分にばかりヒットするし、GTはMさんに、イソマグロはKさんにヒットする確率が非常に高いように思える。

ルアーアクションの癖によるものなのか、それとも先天的な何かなのか、、

何とも不思議な事である。

 

 

余談はさておき、このキハダは単発に終わり、その後は再びシビアな時間帯が続く。

自分は先程のキハダでもう十分に満足してしまったので、ジグに切り替えお土産釣り。

30センチほどのアカハタが遊んでくれた。

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エサ釣りに切り替えたIさんも良型のバラハタをキャッチ。

お店で出す魚を確保せよとの指令を受けていたので、美味しい魚が立て続けに釣れて一安心だ。

 

 

お弁当を食べ一息ついていると、こちらもエサ釣りに切り替えていたSさんにヒット。

根をかわし姿を見せたのはバラフエダイ

Kさんのミノーにもカッポレがヒット。

少し魚の活性が上がってきた様子。

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昼前、ついに潮が本格的に流れ始め、激しく波立っていた海面が潮流により押さえ込まれている。

いかにも回遊魚が回ってきそうな潮だ。

こういう潮の時はとにかく飛距離の出るダイビングペンシル。

沖に向かってフルキャストを繰り返していたMさんの別注平政が沈黙を破った。

 

危なげなく上がってきたのは10キロほどのカマスサワラ。

Mさんは続け様にカマスサワラをもう一本追加。さすがである。

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自分は実はこのカマスサワラが結構好きで、「俺もそのカマスサワラを仕留めるぜ」と言わんばかりにキャストし続けていると何やらヒット。

もぞもぞと控えめにバイトしてきたが、しっかりと竿に重みが伝わったのを見計らい、大きく合わせを3発ほど入れてやると、ファーストランが始まる。

重厚感はないが、早い走り。

ラインの角度を見て、大きく左に立ち位置を変えてポンピング開始。

手前のテラスに触れる事なく上がってきたのは先程と同等か、それよりやや小ぶりのキハダ。

Iさんを呼び、リーダーを掴んでもらおうとした段階でポロリと外れて元気よく海に帰っていった。

そこまで大きくはなかったし、なかなか綺麗なファイトをする事が出来たので、まあ満足だ。

 

皆にキハダが釣れた事を告げ、さあ全員で釣り再開と思ったところで、沖に浮いていた船から撤収の合図。

もう一度か二度くらいは回遊魚の群れが回ってきそうな感じだったが、こればかりは仕方がない。

忘れ物がないか入念に確認をし、磯を後にした。

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(船酔いで限界突破のお二人笑)

 

 

これで半年間の滞在期間における沖磯釣行は一旦終了。

残りの数日は部屋の片付けと送別会に追われる事になりそうだ。

さて、、。

母島の釣り⑯

もう半年間キャンパスに足を踏み入れていないが、一応所属している大学の釣りサークルの仲間が、"遠征"としてこの地を訪ねて来てくれた。

わずか数日の釣行に夢を乗せ、高い交通費と26時間にも及ぶ船旅をものともしない彼らの熱意には頭が上がらない。

 

この地に身を置かせてもらっている者として、つい忘れてしまいがちだが、夢が詰まった遠征というものは、夢の舞台は、いつだって怖いし、理不尽だ。

報われる者の傍には常に報われない者が存在するし、いつ報われるかもわからない状態で大自然と漠然と向き合う事を強いられるあの時間は、果てしない。

底が見えない。

 

けれどその先に、全てを帳消しにしてくれる、見たことのない景色が待ってくれている事を、幸運な事に自分はこの地で経験させてもらった。

是非ともあの瞬間を、仲間にも味わってもらいたい。

あの興奮と感動を、仲間と共有したい。

 

そんな思いを胸に、遠征組と沖磯に同行させてもらった。

 

 

9/11

中潮

満潮…3:12、17:09

干潮…10:10

 

5時15分、出船。

向かう先は船長チョイスで姉島最南端、二本岩。

アタリハズレの激しいこの磯だが、今年に限って言えば行くと必ずイソマグロから反応を得られている磯であり、母島海域の沖磯としては掛けてからのやり取りが比較的易しいポイントなので、初日としてはもってこいなのかもしれない。

 

内地の磯渡しとは一味違うチャカ付けに少々戸惑う様子を見せながらも、皆無事渡礁。

 

各々タックルを組み、早速ルアーを投げ始める。

朝のチャンスタイムは全員ノーバイト。

目の前は次第に二本岩特有の、右から左に向かって流れる激流と化し、ルアー操作もままならない状況となったので、自分は1段階軽いタックルに持ち替え、ジギングでお茶を濁す

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仲間にもこの潮の時は回遊魚はまず釣れない旨を告げ、エサ釣りを試してもらう。

自分は竿を置きギャフを持ち、完全にサポート体制。

他ではなかなか味わうことのできないビッグファイトを、是非とも体験してもらいたい。

 

まず顔を見せるのはすっかりお馴染みのバラハタ。

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続いて大物釣り歴わずか半年足らずの仲間の竿が絞り込まれる。

あまりの引きの強さにしゃがみ込んでのファイト。際どい勝負だった。

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顔を見せたのは7キロクラスのカッポレ。

磯からこのサイズのヒラアジは立派です。おめでとう!

 

そこからしばらくはエサ取りの猛攻に皆苦戦している様子。

ギャフを片手にのんびりご飯を食べていると目の前で仲間の竿が絞り込まれる。

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独特な模様が格好いいマダラハタ。

食レポ楽しみにしています。

 

自分はなんだか腰が重たいままなので、携帯片手にしばらく撮影係。

せっかくの遠征なので良い思い出にもなって欲しい。

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そうこうしているうちにようやく潮が緩み始めた。

仲間には冷凍ムロのフカセ釣りを試してもらう。

すると早速ヒット。潮が変わると顔を見せてくれる魚も変わってくれるのが釣りの面白いところだ。

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まずは60センチほどのハマフエフキ。

 

足早にリリースを済ませたと思うと、連続ヒット。

なかなか強烈な引きを見せ上がってきたのは

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9キロ弱の立派なバラフエダイ

ボトムでかけるとこの魚もなかなか手強い。リーダーはボロボロになっていた。

 

このバラフエダイのギャフ掛けを済ませたあたりから、本格的に1発出そうな潮にいよいよなってきたので、自分も本腰を入れて釣りを再開。

するとやはり、中型のイソマグロが足元までルアーをチェイスしてきた。

一度ルアーを回収し、アンダーハンドでイソマグロが消えていったあたりにルアーを投入。

ちょんちょんとその場でルアーを動かしていると、下からイソマグロがルアーに突進してきた。

ヒット!

と思った矢先、パァン!!っと音を立ててpeラインが弾け飛んだ。

合わせ切れ(笑)

自分のメンテナンス不足です。反省。

 

チャンスはその一瞬だけで、その後海は沈黙。

終了間際に自分が1メートルほどのバラクーダを釣って納竿。

結局ルアーでの魚からの反応は午後に自分に出た2発だけ。まあこんな日もあるでしょう。

 

 

9/12

大潮

満潮…4:09、17:40

干潮…10:54

 

前日23時までのアルバイトの疲れを感じつつ、眠気まなこをこすり5時に港へ。

「今日こそ10キロ回遊魚!」

と仲間と言い合い、沖を目指す。

 

まず乗ったのはメガネ岩という港からすぐの磯。

足元のテラスが非常にキツく、エサ釣りは絶望的なのでc級磯と呼ばれているが、ルアーで狙う回遊魚に関してはそこまで悪くない磯だ。

 

東からの爆風に耐えつつ、各々ルアーを投げ始める、と、いきなりカマスサワラのスーパーバイト!

乗らなかったもののなんだか幸先が良い。

と思っていた矢先、奥の方でやっていた弱冠18歳(?)の後輩に15キロほどの大型カマスサワラがスーパーバイト&ヒット!

味わったことの無いであろう猛烈なファーストランをなすすべなく耐える姿をニヤニヤしながら見つめつつ、サポートに駆け寄る。

「どうすればいいですか!!??」

と聞かれたので、とりあえず足場移動を促し、あとは「頑張って👍」とだけ告げ本格的にファイト開始。

50メートルほど走って止まったカマスサワラを重そうに、幸せそうにポンピングしている姿が印象的だった。

サワラは基本的に表層を走りまくるだけなので獲りやすいとされているが、15キロを超えるとサワラとてなかなか手強い。

セカンドラン、サードランを耐えたあたりで、何かに触れたのだろうか、本線のpe5号からブレイク。

これが磯の洗礼です。次は6号以上で臨みましょう。

 

その後もすごい頻度で魚がルアーに出る状況が続くが、いまいちヒットまで至らない。

こういう時はルアーのサイズを落とすのが手っ取り早い解決策なので、ルアーのサイズを190mmに落とすと案の定ヒット。

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カマスサワラとカスミアジが立て続けに。いずれも7〜8キロくらいだろうか?

 

同じくルアーのサイズを落とした仲間にもカマスサワラが。

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母島の沖磯と言っても、これほどトップに反応がある日は滅多にない。

少なくとも自分が今まで経験してきた沖磯釣行の中では間違いなく1番魚の活性が高い。

遠征という限られた日程の中で、最高のアタリ日にどうやら出くわしたようだ。

 

この大チャンスを逃して欲しくなかったので、まだ釣れていない仲間に釣り座を譲る。

 

まずは先程切られた後輩くんがキメジをキャッチ。

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5キロくらいだろうか。

とても嬉しそうにしている姿から、釣りが好きなのがひしひしと伝わってくる。

 

続いて前日良型のカッポレを上げた仲間に大型魚が掛かった模様。

なんとか手前のテラスを突破し姿を見せたのは15キロ、堂々のカマスサワラ。

今遠征最初の10キロ超え回遊魚に礁上は活気付く。

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この日未だノーキャッチの仲間のルアーにも何度かサワラのスーパーバイトがあったものの、残念ながら乗らず。

慣れていないとフッキングのタイミングってやはり難しいのだ。

 

日が完全に上り、魚の活性が低くなってきたのでここで瀬替え。

名礁、サワラ根を目指す。

大潮という事もあり、思わず目を見張るほどの激流が正面から磯に当たっておりチャカ付けは困難を極めたが、なんとか渡磯。

根の位置や、どこで魚を掛けるべきかみたいな話を少しだけして、まだ釣れてない人から良い釣り座についてもらう。

 

開始早々、後輩くんにイソンボのチェイスがあった様子。

やはりこの日の魚の活性は相当高い。

 

が、ここまで潮が流れていると走る魚はまず釣れないので、仲間たちにエサ釣りをするよう促し、自分は買ってきた缶コーヒーを飲みながらギャフを片手にエサ釣り見学。

あたりが多い釣りは見ているだけでも楽しい。

 

エサ投入直後、いきなり何やらデカそうなものがヒット!

も、あっという間に魚はハエ根をグルリと旋回しラインブレイク。

サメっぽい感じが否めないが、とにかくデカかった。残念。

 

その後、エサなりジグなりでカッポレを何匹か追加したあたりでアタリが途絶えた。

こういう時は休むに限る。

磯の上で仲間たちとお弁当を頬張り時を待つ。

 

昼前、少しずつ潮が緩み始めたのを見計らい、自分もいよいよ釣り再開。

流れに乗せる形でミノーをファストリトリーブしていると、3投目、足元で、出た。

 

イソマグロ。しかも相当デカイ。

 

足元でギラリと銀色の魚体を翻したそいつは、とてつもないスピードでボトムに猛ダッシュ

足元での難しい攻防を強いられる。

 

ファーストランを凌ぎポンピングを始めたものの、やはり体力を削りきれていない状態の魚は手前の根に張り付く。

ファイトから2分ほど経過した頃には、もう何箇所もラインが根に噛んでしまっていた。

こうなってしまったら仕方がない。

ベールを返してしばらく奮闘したものの、無念のラインブレイク。

まだまだ修行が足りないです。

 

急いでリーダーを結びなおし釣りを再開。

幸運なことにイソンボの時合いはまだ続いており、3チェイス得ることが出来たがバイトには至らず。

イルカの群れが磯周りを徘徊し始め、いよいよ魚の気配がなくなってしまったので再度瀬替え。

朝良かったメガネ岩を再び目指す。

 

連日の疲れからか、なんとなく磯の上の雰囲気は気怠さのようなものに包まれていて、雲行きが怪しい。

釣れない時間がしばらく続いていたが、未だノーキャッチだった仲間のルアーに、出た。

急いで駆け寄りサポート。

かなり重そうにポンピングしていたが、ラインの角度は悪くなかったので、ゆっくり焦らないよう注意し、上がってきたのは本命の泳ぐ魚。

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キハダ、14キロ。

尻尾へのスレがかりだった。

磯からこのサイズのキハダはなかなかお目にかかれるものじゃない。

遠征で、(こだわりがあるのかは知らないけど)こだわりのルアーで、このサイズをものにするのは本当に立派です。おめでとう!

 

彼の勢いは止まらず、この後立て続けに9キロのヒレナガカンパチをキャッチ。

イバラ道の先に広がっていた景色に、感極まっている様子がとても印象的でした。

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これを最後に納竿。

唇を噛みしめる者、万感の思いに浸る者、それぞれがそれぞれの悔しさ、課題、あるいは感謝を胸に、磯をあとにした。

 

 

 

 

2日間というあまりにも短い沖磯釣行だったが、沖磯のポテンシャル、沖磯の難しさ、そのどちらもが随所に見られた良い遠征になったのではないでしょうか。

 

悔しい思いをした人もいるようですが、一歩ずつ前進することだけでなく、1歩ずつつまずくことだって立派な成長だと思っています。

 

難しいからこそ価値ある、全てが報われる「あの瞬間」を、これからも共に求め、焦がれ、切望していきましょう!

母島の釣り⑮

目がさめるとまだ外は夜の暗幕に覆われたままで、季節の移ろいをつい感じてしまう。

小さな変化を肌で感受できるのは、この生活を日常のものと出来ている心の余裕からか、はたまたそういう性分なだけか。

そんなどうでも良い物思いにふけるも束の間、今日も荷物をまとめて5時に港に向かう。

 

すっかり恒例行事になってしまった沖磯釣行。

 

全国の大物釣り師の方達にとって、今の自分の境遇はまさに"夢"そのものなのかもしれないが、日常と化した夢には、かつてほどの高揚感、情動を喚起する力は残っていない。

一方で、変な緊張感から解き放たれ、純粋に釣りを楽しむことができるという面では、やはり今の自分の境遇は恵まれているのだろう。

 

「幸福は1種類しかないが、不幸は人それぞれに千差万別だ。」

 

某小説家が残した有名な言葉のほんの上澄みを、自分は今実際に体験している最中なのかもしれない。

 

 

仰々しいばかりで中身の薄い前置きが少々長くなってしまったが、5時出船。

初秋の色を滲ませた晴天に恵まれ、空気を目一杯吸い込みながら船に揺られる。

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向かう先はサワラ根。

この日は東風が10メートル近く吹いていたが、この島は東風に強く、ウネリがキツくなければ島の西側に位置する磯には大抵乗れる。

 

ポイント沖に到着。

磯の上でカツオ鳥が4羽ほど、強風に身をさらし、沖を見ている。

「お邪魔します」と小さく口ずさみ、磯の上に足を踏み入れた。

 

 

9/1

中潮

満潮…6:47

干潮…13:15

 

この日は釣り部全員集合の予定だったが、2日前に1人サッカーで足を負傷してしまったので4人。

MさんKさんSさん自分というメンバー。

朝一、ベイトタックルでポッパーを投げていると早々にバックラッシュ

絡んだ糸と格闘していると後ろでMさんが早速何かを掛けていた。

魚は北側のハエ根の方に旋回しようとしたが、13ftのロングロッドで華麗に魚をいなし、上がってきたのは15キロほどのややブラックGT。

幸先の良いスタートに礁上は活気付く。

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続いて魚を掛けたのはSさん。14センチの小型ダイビングペンシルをスキッピングしていたら食ってきたようだ。

上がってきたのは10キロほどのカマスサワラ。

去年(?)から大物釣りデビューしたSさん、4度目の母島沖磯チャレンジで念願の10キロ回遊魚達成。

敗北の悔しさを味わった上で、自らの腕で"釣った"1匹の感動を知っているだけに、ついついこちらまで嬉しくなる。

やはり「磯から10キロ」って1つの壁なのだ。

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その後は全体を通してカマスサワラのバイトが頻発するものの全て乗らない。

自分には5バイトあったものの1匹もファイトまで至らなかった。

前々から感じていたが、どうもカマスサワラとシングルフックとは相性が悪いらしい。

ただ、カマスサワラは下手にフッキングしてしまうと歯ズレでスパスパ糸を切られてしまうので、そうした観点からも自分はシングルフック派だ。(1番はリリースのためだが)

 

続いてナイロン30lb+デッドベイトの作法スタイルで釣りをしていたKさんにヒット。

上がってきたのは80センチほどのハマフエフキ。

自分は1時期このハマフエフキを釣ってみたくてしょうがない時があって、伊豆諸島ではじめて70センチ弱のハマフエフキをルアーで釣り上げた時には大興奮したものだが、この海域だとこの魚は完全に脇役。

ハマフエフキ好きの自分としては少しだけ寂しい(笑)

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朝のチャンスタイムはこれにて終了。

バイト先の店長が作ってくれたお弁当で早めの昼食をとる。ありがとうございます。

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トップへの反応が薄くなってきたので、Mさんと並んでミノーを投げているとMさんに何やらヒット。

最初はまたサワラかもと2人で言っていたが、手前まで寄ったあたりでボトムに猛ダッシュ、後、根ズレでラインブレイク。

キハダだろうか?

根ズレは仕方ないが顔は見たかった。

 

Mさんのラインブレイクに触発され、より気合を込めてミノーを投げまくる。

 

と、突然海が覚醒。

 

カッポレとカスミアジの大群が後ろからついてきたと思ったら、下からイソマグロまでルアーを見に来る始末。

「海が覚醒しました!!!」

と同行者たちに向かって叫び、再び興奮のるつぼと化した海にルアーを投げ込む。

と、やはりカッポレとカスミアジの大群が。

「何が起きたんだ?」

などと思いながらルアーを回収しようと思ったその時、カッポレの群れを押し分け、もう半分海面から顔を出しているミノーに20キロほどの魚が突進してきた。

すぐ足元での出来事なので完全に目があった。GTだ。

正面にハエ根はないが、左右には厄介なハエ根が張り出しており、主導権は完全に魚側。

多少強引にファーストランを止め、ポンピングに差し掛かる。

セカンドラン、サードランも耐え、魚体が見えてきた。

ここで魚は右側のハエ根に回りはじめたので、焦って足場を移動したのだが、これが完全にミスチョイス。

移動途中に変にラインの角度が悪くなってしまったらしく、根ズレでリーダーブレイク。

足元でヒットすると、魚に余力を残した状態で手前の根際での攻防を強いられるので確かに難しい。

だとしても、ファーストランは凌げたわけなので、今のは獲らなければいけない1匹だった。とても悔しい。

 

朝のバックラッシュでベイトリールはご臨終中なので、再びスピニングタックルにリーダーを結び奮闘したが、その後海は沈黙。時合いは本当に一瞬だけなのだ。

 

Sさんのルアーボックスが強風に煽られ海に飛んで行ったりなどのハプニングもあり、なんとなく磯の上は緊張感に欠ける雰囲気が漂っている。

まあそんな日もあるだろう。

 

昼を過ぎたあたりにSさんに、終了間際にKさんにそれぞれイソマグロと思われる良い当たりが出たが、Sさんは根ズレ、Kさんはスリーブの食い込みでいずれもラインブレイク。

結局この日は4人とも大きな魚に1ラインブレイクずつ食らい、仲良く(?)磯を後にした。

 

これが遠征だったら悔しくて1ヶ月は引きずるところだが、10日後には遠征者とまた磯に乗る予定。

サポート役がメインになるだろうが、もし自分にもチャンスが回ってきたら、しっかりとものにしたいところだ。

 

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p.s. 猫背を治したいです。(涙)

母島の釣り⑭

午前4時、アラームの音に重たい瞼がこじ開けられる。

寝起き特有の、心地良い眠気が全身に染み渡る。

やはり早起きは苦手だ。

いつもならそのまま目を閉じて、二度寝をするまでの至福の狭間を堪能するのだが、そうはいかない。

 

今日は沖磯の日。

 

顔を洗い歯を磨き、コンタクトレンズをはめた頃にはもう体の半分は寝起きを脱していて、階段を降り1階のキッチンでおにぎりを作り始める頃には、眠気はどこか遠くに消え去ってしまっている。

 

沖磯に行く日のルーティーン。

 

だけど、この日の沖磯は自分にとって少しだけ特別。遠征と合わせると、通算11回目の母島の沖磯なのだ。

 

普通に社会的生活をおくっていると、母島に来ることができるのはせいぜい1年に1回。

で、1航海で沖磯に乗れるのは2日間だけなので、本来なら"母島の沖磯"という"夢の舞台"に立つことが出来るのは、1年に2回のみ。

 

……11回目。

そう、考えすぎな気がするが、本来のペースで換算すると、今回で6年目の沖磯に突入するのだ。

 

なぜか世の中は物事を5年周期で区切る場合が多いので、2周期目、再スタートの意も込めて朝から気合が入る。

 

 

午前5時、港に集合。

今日は釣り部のIさんと、父島から来た釣り師3人というメンバーだ。

「乗りたい磯とかありますか?」と、父島から来た方達に聞いてみるも、母島の沖磯事情にあまり詳しくないというので、磯選びを任される事に。

こうなった場合、どの磯に乗るか実は前日から心に決めていた。

 

二本岩

 

自分をこの島に連れてくるきっかけとなった、あの57キロのイソマグロが釣れた磯であり、4月に来た時に悔しい思いを強いられた因縁の名礁。

「二本岩でお願いします!」

と、もうすっかり顔馴染みの船長に告げ、出船。

 

この日は見事なまでのべた凪で、水面はまるで鏡のよう。ボニンブルーの海と朝日とがおりなすコントラストは、まるでどこかの桃源郷にいるような錯覚に陥るほどだった。

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「あれがホカケ岩、今年の春にキハダの日本記録が釣れた場所です。」

「あれがローソク岩、魚影は濃いですがかけてからが難しいです」

 

道中、父島から来た方達に沖磯の説明。興味津々といった様子。

実質6年目ともなると母島の沖磯事情にも随分詳しくなってしまった笑

 

ローソク岩を遥か遠方に臨みながら、姉島の西側を南に進むと二本岩が見えてくる。

 

「4月の自分とは違うんだ!」

と、心に言い聞かせ、磯に乗り込む。

 

 

8/22

小潮

満潮…10:35

干潮…4:17、10:35

 

この磯は下げ潮の時間帯は右から左に川のような激流が走り、加えて左手はハエ根が張り出しているため釣りにならない。

が、この日は朝まずめは上げ潮。

左から右に緩やかに潮が流れており、コンディション的には申し分ない。

 

まずはロングリーダーシステムを組んであるベイトタックルで、左手の朝根付近をポッパーでネチネチ探る。

何もなし。

次にスピニングタックルに持ち替え、飛距離の出るダイビングペンシルで広範囲に探る。

何もなし。

と、隣でミノーを投げていたIさんに何やらヒット!

 

この日のために新調したというオキナワマンビカがフルベントしている。デカそうだ!

 

早速ギャフを持ちサポートに入る。

父島から来た方達はそんなの気にせず釣りを続けている。

「ウソだろ。。」

と思いつつ、年上の方達に物申すほどの気概を持ち合わせていないので1人サポートを続ける。

 

磯でのビッグファイトに慣れていないIさんは、磯際で両手で竿を持ち必死に耐えている。

魚は根がない右へ右へと旋回していたので

「そのまま走らせて大丈夫です!ゆっくり時間かけてとりましょう!」

と声をかける。

走りは割とすぐに止まったのだが、どうやらこれがめちゃくちゃ重たいらしく、一向に浮いてこない。

Iさんは腰が限界を突破しているらしく、磯際で座り込んでファイト。かなりしんどそうだ。

 

10分くらいファイトしただろうか?ようやく魚が浮いてきた。

GTだ!!

なんと尻ビレにトレブルフックが一本だけかかっただけの状態。どうりで重たいわけだ。

 

いつ針が外れてもおかしくない(というかよく外れなかったなと不思議なくらい)の状態に、ギャフ掛けが少々緊張したが、無事えらの隙間にギャフを掛けランディング。

114センチ、16キロの立派なGT。

いつも一緒に釣りに行っていて、とてもお世話になっているIさんのメモリアルフィッシュのサポートができて、こちらまで胸がいっぱいになる。

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これは時合だと、自分もミノーにルアーチェンジしてフルキャスト

すると、25キロ前後のイソンボが2.3匹足元までチェイス

これはこの二本岩ではアルアルで、時合いに突入すると、アベレージ25キロほどのイソンボが毎投と言ってもいいほど足元までチェイスしてくる。(経験した事がある人はよくわかるだろう)

4月にきた時はこの時合いに、皆が次々とイソンボをヒットさせていくなか、自分だけ全然ヒットせず、悔しい思いをしたのだ。

 

今回は絶対にこの時合いを逃したくない。

 

一心不乱に、ルアーをキャストし続ける。

 

と、ついにヒット!

ファーストランは60メートルほど。長い距離を猛スピードで走るこの引きは間違いなくイソンボだ。

ハンドドラグを時折混ぜつつ、ファーストランを止め、ポンピング。

二本岩はサワラ根などと比べて足場が良く、Iさんが隣でサポートに入ってくれているので、体を思いっきり反り全身で魚を寄せる。(父島アングラーズは相変わらず釣り笑)

セカンドラン、サードランと続くが、魚は正面に走ってくれているのでそのまま寄せる。

が、手前まで来て、魚体がチラリ見えたあたりで、一変、左側に徐々に向きを変え始めた。

まずい。

左手にはハエ根がビッシリ。

無理矢理止めるか、ベールを返して向きを変えるか、一瞬迷ったが、後者を選択。

が、この判断が完全に裏目に出た。

テンションが緩んだ隙を見て、魚はそのまま左手に加速し、ハエ根をグルリと回りこんでしまった。

考えられるケースの内、最悪のパターンだ。

魚を何とか根から引き剥がそうと、5分ほどは粘ってみる。

途中何箇所か根から糸が外れ、10メートル程は巻き取れたが、途中でガッと大きな根に魚が引っかかる感触があり、この根をどうしても突破できない。

万策尽き、結局ラインブレイク。

 

めちゃくちゃに悔しい。

 

切られないと上手くならないが、それ以上に、獲らないと技術は向上しない。

「今のは魚側に運があった、仕方ない」と思える切られ方ならまだしも、今回は完全に自分の判断ミス。

 

因縁の磯で、また1つ宿題を出されてしまった。

 

なんだかんだ長時間ファイトしたので、体力回復も兼ねて丁寧にリーダーを結び直す。

その間に父島アングラーズにミノーを投げてもらうがヒットしない模様。

時合いが終わってしまったのだろうか。

 

30分後、体力が回復したので再度ミノーやダイビングペンシルを投げ倒したが、再びイソンボのスイッチが入ることはこの日はなかった。

 

 

さて、母島生活残り1カ月。

内地に帰るまでに、今回やり残した宿題を、胸を張ってやり切ったと言うことが出来るだろうか…?

母島の釣り⑬

法事があった関係で、8月の頭は1週間だけ内地に帰っていた。

26時間の船旅を経て東京竹芝桟橋に着くと、そこはもう見慣れたはずのコンクリートジャングルで、慣れきったはずの満員の山手線に揺られ、見慣れたはずの無機質な景色を車窓からぼんやり眺める。

 

見慣れたはずの

 

都会の喧騒に晒され、改めて「島に住んでいる」ということを実感させられる。

「…こんな感じだったっけ?笑」

と物思いにふけってみたり。

 

一人暮らしのアパートがある東京、実家がある岡山、祖父母の家がある福岡の3県でそれぞれ用事を急いで済ませ、内地を満喫する暇なく再び帰りのフェリーに乗り込む。

 

帰りのフェリーかあ笑

 

まさか、竹芝桟橋発父島着のおがさわら丸を「帰りのフェリー」なんて呼ぶ日が来るとは思っていなかった。

遠征ではじめてこの船に乗り込んだあの日の高揚感や、5ヶ月前に決死の覚悟でこの船に乗り込んだあの日の不安といった感情はもう一切なく、船内にはどこか「日常」の香りのようなものが漂っていて、なんだか不思議だ。

 

 

 

1週間の短い内地休暇を経て母島に戻り、さあ釣りを再開するぞと意気込んでいたものの、台風10号の影響によりそれから1週間は狭い寮の部屋の中で缶詰め状態。

甲子園を見ることとリールの整備くらいしかやる事のない地獄のような数日を経て、ようやく釣りを再開した。

 

 

8/14

この日はまだ外海は大荒れ。

が、風は少々落ち着いて、港内だと何とか釣りが出来そうな様子だったので、泳がせ釣りをすべく港に足を運んだ。

極度のめんどくさがりの自分は、エサ釣りの仕掛けを作るのが面倒くさいのでルアー釣りばかりやっているという節も多少はあるのだが、泳がせは糸に針を結び、そこにメアジを付けるだけという非常にシンプルな仕掛けで行うことができるので結構好きだったりする。

 

釣りたてのメアジを海に放り込むとすぐにダツとバラクーダの猛攻。

メアジはボロボロになるし、歯でリーダーもスパスパ切れてしまい嫌気がさしたので、足元にメアジを留まらせてのんびりアタリを待つ。

と、重量感のあるアタリが!

「うおおおおおおおいよっしゃあぁぁぁぁぁ」

と、約1ヶ月ぶりの魚の感触に大興奮しながら上がってきたのは10キロくらいのカスミアジ。

カスミアジにしてはなかなかの良型で、幸先の良い再スタートを切ることができた。

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8/18

この日は釣り部のIさんと地磯へ。

台風後であるのと、しばらく誰も入っていないのとで良い釣果を期待していたが予想に反して何もなし。

足元でカッポレが3度食ってきたが全部フッキングには至らなかった。

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8/19

深夜、2時になっても全然寝付けないので、深夜テンションでラインシステムを組みその足で短い方の堤防へ。

満月の夜の堤防はなぜかGTの実績が高く、また、1ヶ月ぶりの短い堤防なので自転車を漕ぐ足取りも軽い。

はじめてこのポイントを案内してもらった時は、あまりの恐怖で終始足がすくんでいたが、今では1人でも楽々と来ることができる。少しは成長したな笑

 

足場が一段低いランディングポイントに簡易落としギャフを置き、タックルを組む。

漆黒を纏う鏡のような水面を月光が妖しく照らす光景は、何度見ても神秘的で、自然と背筋が正される。

 

ドラグの確認を終え一投目、いきなりヒット。

アタリ方は結構良かったのだが、全然引かない。

ゴリゴリ寄せてきて浮いてきたのは90センチほどのギンガメアジ。1人でのランディングの練習にはもってこいだ。

空気を吸わせ、ランディングポイントまで10メートルほど魚を移動させ、エラのところに慎重にギャフをかける。

はじめてにしてはスムーズに単独でのランディングを行う事ができて、少しの間優越感に浸る。

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魚が元気なうちにリリースを済ませ、再びルアーを海に放り込む。

すると連続ヒット!

いつものように追い合わせを何度か決めるも、魚が反転してくれない。

合わせを決めても、魚が反転してくれない事にはフッキングは完璧に決まらないので、反転してくれるまで竿尻を脇に挟みゴリ巻き。

するとようやく魚も異変に気付いたようで、クルリと沖に反転しファーストランを始める。

竿尻をギンバルにセットするのはこのタイミング。

 

少々話が脱線するが、空前のgoproブームにより、SNSなどでファイト時の手元の様子を見かける機会が増えた。

で、1つ思うのが、フッキングと同時に、慌てて竿尻をギンバルにセットしようとしている人が多すぎるように思える。

糸ふけが十分に取れていない状態でギンバルにセットしようとする事は、ラインテンションが緩むのでフックアウトの1番の原因だし、あたふたしているうちに根に潜られる危険もある。

まあとにかく、焦ってギンバルに竿尻をセットしようとする事はご法度なのである。

 

話を元に戻そう。

我ながら冷静にイレギュラーなファーストランをやり過ごしファイト開始。

で、この魚、かなりデカイ。

ゴンゴンと首を振りながら糸を引き出していくので、サメかもと一瞬思ったが、沖合で力強く粘り続けるのでおそらく魚だろう。

このポイントは足元と左手にテトラポットがぎっしりと敷き詰められており、左に走られると万事休すなのだが、運悪く魚は左に旋回を始めた。

下手な小細工はバラしの原因なので、とりあえずそのままポンピングで寄せに入るが、半分くらい寄せたところでいよいよ嫌な角度でラインとテトラとが交差し始めた。

この時はまだ20キロくらいの個体だと思っていたので、実験がてら試したかった、あえて竿を直線にするファイト方法を試してみる。

魚の走る向きを変えたい時、適度にテンションを緩めて魚の向きを変えたいのだが、ベールを返すのは少々リスクが高すぎる。

ので、フルベントしている竿の弾性を直線にする事であえて殺し、魚にかりそめの自由を与えてやる事で向きが変わるのではないか、という作戦だ。

結論から言うと今回はコレがハマった。

魚は徐々に右側に向きを変え、ついには正面まで戻ってきたので、渾身の力で一気に浮かせにかかる。

ボワーっと、白色の魚体が浮いてきた。

ヘッドライトで海面を照らし魚体を確認する。

GTだ!

しかも、想定していた個体よりもだいぶデカイ。

前回、隣でMさんに30キロ前半のGTを釣られていたのだが、浮いてきた魚体の大きさはそれとほぼ同じ。30キロはありそうだ。

ロウニンアジ自体はこれまで3本釣っているのだが、サイズには恵まれていなかったので、ついに浮かせたGTと呼べるサイズにテンションが上がる。

空気を十分に吸わせ勝負あり。

「いよっしゃああぁぁぁやったぜふうううぅぅぅ」

などと、夜の堤防で1人叫びながらランディングポイントまで移動していると、フッとテンションが抜ける。

 

??????

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………

…………。

どおしてだよおおおおおおおおオォォォアああああ

 

フック折れ。

誰もが通る道なのだろうが、いざ自分の身に降りかかるとやっぱり悔しい。

悔しさのあまり、だだっ広い堤防で大の字になって寝転び天を仰ぐ。

皮肉にも見上げるとそこには満点の星空。

瞬く星々が悔しさに拍車をかける。

 

すぐに折れたフックを交換して再度キャスト。

数分の沈黙の後、なにやらヒット。

1匹目のギンガメアジよりは引きが強いがポンピングは軽い。

正体は70センチ強の可愛いロウニンアジ。さっきのGTの子供だろうか?

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その後もかなりの頻度でルアーに何者かのバイトが頻発したが、何故か全て乗らず。

辺りが薄明るくなり、鳥のさえずりが耳に入ってきだしてタイムアップとなった。

 

やっと浮かせたGTと呼べるサイズのロウニンアジ。あと一歩のところだったが、最後の詰め、今回は向こうに運があったのだろう。

気持ちを切り替えて、残りの島生活もストイックな釣り生活を送っていこうと、帰りの山道で思うのであった。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カスミアジ

ロッド:ランナーエクシードファイナルスタンドアップ105bxh

リール:アベットラプター lx

 

ギンガメ、ロウニンアジ

ロッド:グランデージxd 100ex

リール:ツインパワーsw14000xg

母島の釣り⑫

ただただ、信じられなかった。

 

海面に姿を現したそれは、自分の知っているものとは明らかに一線を画していた。

 

異質だった。

 

磯の上にあげられたそれを見て、思わず、畏怖してしまうほどに。

 

 

 

 

 

168センチ、57キロという記録がある。

現在、80lbクラスでの磯からの堂々の日本記録だ。

小笠原の、母島の磯から、スタンディングファイトで上げられたこの記録的な巨大魚の存在を知ったのはいつだっただろうか。

ここ2年間の内の事であるのは確かなのだが、いつ知ったか、なぜか思い出せない。

 

ただ、スマートフォンの画面越しではあるが、初めてその巨大なイソマグロを目にした時の衝撃は、昨日の事のように思い出す事ができる。

 

その時、自分の中で、何かが音を立てたのを覚えている。

頭の中で、何かが迸ったのを覚えている。

興奮で震える呻き声のようなものが、喉元まで這い上がってきたのを覚えている。

 

なんだ、コレは、と。

 

人間の背丈と変わらないような巨大魚を、明らかにパワー不足に思える細い竿と糸を介して、一人の人間が、「磯から」上げたというのだ。

 

 

船の上から釣る、同サイズのクロマグロやカンパチとは分けが違う。

磯の上での魚釣りにおいては、主導権は魚側にあるから。

 

あの時、携帯の画面に映し出されたその写真に、いったいどれくらいの間釘付けになっていたのだろうか。

思い出せない。

 

けれど、その時に1つ目標が出来たのは思い出せる。

胸の奥から熱くなるような情動に駆られると同時に、1つの明確な目標がその時にできたんだ。

 

目標?

いや、あの時、1つの、大きな大きな、周りの人から鼻で笑われるような、無謀な夢が出来たんだ。

 

 

「磯から、自分よりも大きな魚を釣る」

 

 

 

サワラ根で20キロのキハダを上げ、初のロウニンアジも無事に釣る事ができて、少しだけ肩の荷が降りていた矢先、先日、何者かにコテンパにされた。

おそらく巨大なイソマグロ。

いつものように朝の2時に起き、いつものように釣り場に足を運んで、いつものようにルアーを投げていると、いつもとは明らかに違うサイズの魚が掛かり、3色(75メートル)ノンストップでラインを出されブレイク。

 

あのサイズの魚をとるために、捨て身の覚悟でこの島に来たというのに。。

 

フツフツと湧き上がる悔しさを噛み締め、気付けばまた沖磯釣行を決行していた。

 

7/28

若潮

満潮…2:13、16:36

干潮…9:28

この日は久々に複数人の予定が合い、釣り部の仲間(といっても年上の方達ばかりなのだが笑)4人での釣行。

5時に港に集まり、各々荷物を船に積み込む。

 

行きの船の上で談笑。

向島の上空には虹が2本かかっており、なんだか幸先が良い。

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40分ほど船は北上し、ポイント沖に到着。

前回に引き続き、この日もサワラ根に乗せてもらう事になった。

 

4人とも無事渡礁。

荷物を磯の1番高いところにまとめ、各々釣りを開始。

 

が、予想に反して魚の活性がめちゃくちゃ低い。

いつもなら、朝一はルアーを投げるとカッポレの群れがわらわらと付いてくるし、サワラ、イソンボ、GTあたりのバイトも何回かある。

この日はというと、自分に一度イソマグロのバイトがあったのみでその後は4人とも音沙汰なし。

怪しい雰囲気が漂い始める。

 

結局朝のチャンスタイムは、自分が中型のカッポレを1匹とMさんがこれまた中型のカマスサワラを上げたのみで終わってしまった。

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ちょうど潮止まりの時間になったので、竿を置き弁当の準備をしていると、デッドベイトで釣りをしていたKさんの方から「イソンボ!」という声が聞こえてくる。

駆けつけてしばらく見ていると、下からイソマグロがKさんのメアジにじゃれついて来るのが目視出来た。しかもでかい。

が、どうも食い気が立っていない。

昼飯を抜いて釣りをしようかまよったけど、母島海域のイソマグロは「いるけど食わない」で有名なので、ここは腹をくくり昼飯を食べる事に。

 

おいしい。

磯の上で食べるご飯はやはり格別だ。

 

ご飯を頬張りボンヤリ過ごしていた中ふと海を見てみると、さっきまで流れていなかった潮が突然流れ始めていたので、急いでご飯をたいらげ再度ルアーを投げ始める。

 

と、隣で投げていたMさんが叫ぶ!

危なげなく上がってきたのは10キロちょいくらいのヒラマサ。

母島海域では珍しいので是非ランディングしたかったが、直前でフックアウトしてしまった。残念。

直後、自分が投げていたダイビングペンシルにカマスサワラがスーパーバイト。

ルアーを口に咥えたまま、海面から1メートルくらい跳ね上がったカマスサワラの姿をはっきりと目視出来たが、こういうバイトをする時は大抵フッキングしない。

案の定、合わせを決めてやろうと竿を煽っても空振りだった。

まさに時合い突入といった感じで、皆の士気も高まる。

が、それを最後に潮は突然緩み始め、海も沈黙。

Kさんがメアジでアオチビキを釣ったのみで、他は誰も魚からの反応を得られない。

水温の変化が激しいこの海域の沖磯ではよくある事で、水温が下がるとビックリするくらい魚の活性も下がってしまう。それでも潮が走っていたら、エサで底物が良く釣れたりするのだが、この日は潮も流れていなかったため底物も沈黙。

母島の海も、釣れない時は本当に何も釣れない。

 

自分は前日、シマノTVに夢中になりすぎて、図らずも徹夜明けの沖磯になってしまっていたので、少し仮眠をとる事に。

寝心地悪い事極まりない磯の上でグースカ寝ていると、突然のドラグ音で目が覚めた。

見るとKさんがファイト中。

急いで駆けつけようとしたが、これは残念ながらラインブレイク。結構デカそうだったが。(寝起きのため記憶曖昧)

 

しかしこれで完全に目が覚めた。時計の針はラスト1時間を告げている。

タックルを再び握りしめ、西側に向かって釣りを再開する。

 

そして、その時は突然訪れた。

何の予兆もなく、本当に突然。

 

時刻は13:30、沖合を泳いでいた自分のミノーに何やらヒット。

何度か追い合わせを入れてやるも、手応えは軽い。おそらくこの時、5キロ前後のアオチビキか何かが掛かっていたのだと思う。

ポンピングでゴリゴリ寄せてきて磯際まで寄ったあたりで、異変に気付く。

 

いつのまにか、ドラグが止まらなくなっている。

 

状況が整理できなかった。

条件反射で、気付かないうちに磯際でしゃがみ込んでしまっている。

 

いったい、何が起きたんだ?

 

「デカイよ!」

後ろから聞こえてきた声で、我に帰った。

追い食いで、何かとてつもなくデカイのが食ってきたのだ。

 

得体の知れない何者かは、教科書通り、北側のハエ根に向かって走る。

が、とてもじゃないが、走る向きをコントロール出来るサイズの魚じゃない。

磯での大物釣りでこういうシチュエーションを迎えてしまうと、どうしても運頼みになってしまう。

磯際で、ただただ祈り、耐える。

すると、走る勢いは一向に衰えないが、走る向きが本当に運良く変わってくれた。

目の前に厄介な根はないので、止まるまで走らせる。

が、止まらない。

こういう場面で下手にドラグを締めてしまうと、魚が根に向かってしまう傾向があるので、ドラグは極力いじらないようにしているのだが、みるみるうちにスプールから糸が消えていく。

 

このままでは冗談抜きで糸を全て出されてしまい兼ねないので、スプールを抑え、断続的にイレギュラーなテンションを魚に与えてやる。

 

すると、とりあえず一旦止まってくれた。

少なくとも200メートルは走られただろう。

 

急いでポンピングを開始するが、重い。いや、重すぎる。

 

異質

 

そうとしか、表現のしようがない重さだ。

 

重いだけじゃない。

50メートルほど巻き上げると、そいつは思い出したかのようにまた走り出し、振り出しに戻る。

巻き取り、走られ、ベールを返し、立ち位置を変えてを繰り返し、最終的にはヒットポイントの真裏まで磯を移動してきた。北西側でかけて、南東側まで移動してきたのだ。

これ以上東に回られるとマズイ。

この時の立ち位置でも、すでに左手には厄介なハエ根が張り出しており、そこを境に一気に沈み根も増える。

 

勝負所だ。

 

魚の方も、ここが勝負所だと分かっていたのだろうか、最後の力を振り絞り、ジリジリと糸を引き出していく。

手元に、糸が根に噛む感触が伝わってくる。

マズイ。

急いでベールを返し、ハンドドラグで糸が切れないギリギリのテンションを与えてやる。

ここで糸を完全にフリーにしてしまうと、糸が根に絡まってしまい抜けなくなるし、強引に止めようとすると呆気なく切れる。

糸が根に噛む感触も、ハンドドラグでのテンションのかけ方も、付け焼き刃だけど、母島で何度も切られて身につけた技術の1つだ。母島の磯でした苦い苦い失敗が、「経験」となり、歯車のように1つ1つ噛み合っていくような、そんな感覚をこの時感じた気がする。

 

耐える。耐える。耐える。

 

すると、わずかだが魚が右側に向きを変えた。

 

ここしかない。

 

最後の力を振り絞り、渾身の力で魚を浮かせる。

すると、ラインが根に噛む感触が消えた。

 

そこからは、意外と呆気なかった。

何となく、海底付近にいるであろう巨大な何かが、観念したのが伝わってきた気がした。

 

ボカンッッ

 

10メートルほど沖についに姿を現したそいつは、自分が知っているサイズのものではなかった。

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3箇所にギャフを掛け、3人がかりで磯の上に引きずり上げる。

 

言葉は、いらなかった。

 

渾身の、心の底からの、ありったけの笑顔でサポートしてくれた同行者の方達と握手を交わし、魚の元に駆け寄る。

魚の正体はイソマグロ。

192センチ、72.5キロだった。

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大学生活における大切な半年間。

将来のキャリアを見据え、海外に留学をしたり、インターンに参加したりといった選択肢も当然あった。

けれど、心の底から大好きな釣りへの思い入れは、自分の心を揺さぶったあの57キロのイソマグロへの憧れは、憧れの魚に対する激情は、揺るぎなかった。

このために、この1匹のために、この瞬間のために、大きな不安とちっぽけな勇気を胸に、単身、この島に乗り込んだんだ。

周りの人達の暖かい支え、千載一遇のチャンスを与えてくれた釣りの神様、これまでの苦い失敗、全てが奇跡のように噛み合った、まさに"会心の1匹"だ。

 

月並みだけど、本当に、最後まで諦めなくて良かった。追いかけ続けて良かった。

磯の上で、ロマンを追い続けた先には、素敵な夢が待ってくれていた。

夢の先には、いったい何が待ってくれているのだろうか。

 

わからない

 

けど、釣りと一緒で、わからないからこそワクワクするし、挑んでみる価値がある。

夢を掴んだ今、自分に出来ることは、より一層謙虚な姿勢で磯の上に通い続けること以外にないような気がする。

これからも、周りの人達への感謝を忘れず、今の釣りを続けていき、いつの日か、後世に磯の大物釣りの魅力を伝えられる日が来ることを、今は少しだけ楽しみにしている。

 

 

はじめて磯に立ったあの日の挫折が、何度磯に通っても釣れない自分に対する失望が、もうダメだと諦めかけたあの夜の惑いが、ここまでの結果と共に報われるとは自分でも思っていませんでした。

正直まだ夢見心地で、今もこのブログをフワフワした気持ちで書いているところです。

まさか自分が、母島の、いや日本の釣りの歴史に新たな1匹を刻みこむ当人になるなんて夢にも思っていませんでした。

これも、綺麗事とか建前とかではなく、本当に周りの人達の暖かい支えがあってこそです。

周りの人達が与えてくれた機会に、たまたま、うまく便乗できたに過ぎないと思っています。

 

けれど、この記録魚を実際に磯から釣り上げたのは自分らしいので、少しでも多くの人の記憶に、記録として残ってくれたらとても嬉しいです。

 

多くの人から、JGFAの会員になり日本記録に申請すべきだと助言を頂きました。

実際72キロという記録は、自分が使ったラインクラス(80lb〜130lb)のショアからの日本記録を20キロ近く上回るものであり、「磯から」という制約つきでは世界的にも上位数匹に入るかもしれないほどらしいです。

けれど、日本記録なんて華々しい肩書きは、自分なんかには勿体ない気がしてならないし、お世話になってきた人達にきちんと報告さえできれば自分は満足なので、今後も申請はあまり考えていません。

ただ、このブログが、自分がそうであったように、一人の釣り人の心を揺さぶり、夢への第一歩となってくれたらとても嬉しいです。

 

なんだかこれで最後の記事みたいな書き方だけど、母島生活残り2ヶ月、また何か良い魚が釣れたらどんどん更新する予定です笑

 

 

 

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ロッド:グランデージxd 100ex

リール:ツインパワーsw14000xg

本線:pe6号

リーダー:ナイロン180lb

 

 

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