備忘録

大きな魚を、磯から、ルアーで。 釣りに魅せられた20歳の学生が挑んだ半年間の備忘録です。~令和元年4-9月~

母島の釣り⑬

法事があった関係で、8月の頭は1週間だけ内地に帰っていた。

26時間の船旅を経て東京竹芝桟橋に着くと、そこはもう見慣れたはずのコンクリートジャングルで、慣れきったはずの満員の山手線に揺られ、見慣れたはずの無機質な景色を車窓からぼんやり眺める。

 

見慣れたはずの

 

都会の喧騒に晒され、改めて「島に住んでいる」ということを実感させられる。

「…こんな感じだったっけ?笑」

と物思いにふけってみたり。

 

一人暮らしのアパートがある東京、実家がある岡山、祖父母の家がある福岡の3県でそれぞれ用事を急いで済ませ、内地を満喫する暇なく再び帰りのフェリーに乗り込む。

 

帰りのフェリーかあ笑

 

まさか、竹芝桟橋発父島着のおがさわら丸を「帰りのフェリー」なんて呼ぶ日が来るとは思っていなかった。

遠征ではじめてこの船に乗り込んだあの日の高揚感や、5ヶ月前に決死の覚悟でこの船に乗り込んだあの日の不安といった感情はもう一切なく、船内にはどこか「日常」の香りのようなものが漂っていて、なんだか不思議だ。

 

 

 

1週間の短い内地休暇を経て母島に戻り、さあ釣りを再開するぞと意気込んでいたものの、台風10号の影響によりそれから1週間は狭い寮の部屋の中で缶詰め状態。

甲子園を見ることとリールの整備くらいしかやる事のない地獄のような数日を経て、ようやく釣りを再開した。

 

 

8/14

この日はまだ外海は大荒れ。

が、風は少々落ち着いて、港内だと何とか釣りが出来そうな様子だったので、泳がせ釣りをすべく港に足を運んだ。

極度のめんどくさがりの自分は、エサ釣りの仕掛けを作るのが面倒くさいのでルアー釣りばかりやっているという節も多少はあるのだが、泳がせは糸に針を結び、そこにメアジを付けるだけという非常にシンプルな仕掛けで行うことができるので結構好きだったりする。

 

釣りたてのメアジを海に放り込むとすぐにダツとバラクーダの猛攻。

メアジはボロボロになるし、歯でリーダーもスパスパ切れてしまい嫌気がさしたので、足元にメアジを留まらせてのんびりアタリを待つ。

と、重量感のあるアタリが!

「うおおおおおおおいよっしゃあぁぁぁぁぁ」

と、約1ヶ月ぶりの魚の感触に大興奮しながら上がってきたのは10キロくらいのカスミアジ。

カスミアジにしてはなかなかの良型で、幸先の良い再スタートを切ることができた。

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8/18

この日は釣り部のIさんと地磯へ。

台風後であるのと、しばらく誰も入っていないのとで良い釣果を期待していたが予想に反して何もなし。

足元でカッポレが3度食ってきたが全部フッキングには至らなかった。

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8/19

深夜、2時になっても全然寝付けないので、深夜テンションでラインシステムを組みその足で短い方の堤防へ。

満月の夜の堤防はなぜかGTの実績が高く、また、1ヶ月ぶりの短い堤防なので自転車を漕ぐ足取りも軽い。

はじめてこのポイントを案内してもらった時は、あまりの恐怖で終始足がすくんでいたが、今では1人でも楽々と来ることができる。少しは成長したな笑

 

足場が一段低いランディングポイントに簡易落としギャフを置き、タックルを組む。

漆黒を纏う鏡のような水面を月光が妖しく照らす光景は、何度見ても神秘的で、自然と背筋が正される。

 

ドラグの確認を終え一投目、いきなりヒット。

アタリ方は結構良かったのだが、全然引かない。

ゴリゴリ寄せてきて浮いてきたのは90センチほどのギンガメアジ。1人でのランディングの練習にはもってこいだ。

空気を吸わせ、ランディングポイントまで10メートルほど魚を移動させ、エラのところに慎重にギャフをかける。

はじめてにしてはスムーズに単独でのランディングを行う事ができて、少しの間優越感に浸る。

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魚が元気なうちにリリースを済ませ、再びルアーを海に放り込む。

すると連続ヒット!

いつものように追い合わせを何度か決めるも、魚が反転してくれない。

合わせを決めても、魚が反転してくれない事にはフッキングは完璧に決まらないので、反転してくれるまで竿尻を脇に挟みゴリ巻き。

するとようやく魚も異変に気付いたようで、クルリと沖に反転しファーストランを始める。

竿尻をギンバルにセットするのはこのタイミング。

 

少々話が脱線するが、空前のgoproブームにより、SNSなどでファイト時の手元の様子を見かける機会が増えた。

で、1つ思うのが、フッキングと同時に、慌てて竿尻をギンバルにセットしようとしている人が多すぎるように思える。

糸ふけが十分に取れていない状態でギンバルにセットしようとする事は、ラインテンションが緩むのでフックアウトの1番の原因だし、あたふたしているうちに根に潜られる危険もある。

まあとにかく、焦ってギンバルに竿尻をセットしようとする事はご法度なのである。

 

話を元に戻そう。

我ながら冷静にイレギュラーなファーストランをやり過ごしファイト開始。

で、この魚、かなりデカイ。

ゴンゴンと首を振りながら糸を引き出していくので、サメかもと一瞬思ったが、沖合で力強く粘り続けるのでおそらく魚だろう。

このポイントは足元と左手にテトラポットがぎっしりと敷き詰められており、左に走られると万事休すなのだが、運悪く魚は左に旋回を始めた。

下手な小細工はバラしの原因なので、とりあえずそのままポンピングで寄せに入るが、半分くらい寄せたところでいよいよ嫌な角度でラインとテトラとが交差し始めた。

この時はまだ20キロくらいの個体だと思っていたので、実験がてら試したかった、あえて竿を直線にするファイト方法を試してみる。

魚の走る向きを変えたい時、適度にテンションを緩めて魚の向きを変えたいのだが、ベールを返すのは少々リスクが高すぎる。

ので、フルベントしている竿の弾性を直線にする事であえて殺し、魚にかりそめの自由を与えてやる事で向きが変わるのではないか、という作戦だ。

結論から言うと今回はコレがハマった。

魚は徐々に右側に向きを変え、ついには正面まで戻ってきたので、渾身の力で一気に浮かせにかかる。

ボワーっと、白色の魚体が浮いてきた。

ヘッドライトで海面を照らし魚体を確認する。

GTだ!

しかも、想定していた個体よりもだいぶデカイ。

前回、隣でMさんに30キロ前半のGTを釣られていたのだが、浮いてきた魚体の大きさはそれとほぼ同じ。30キロはありそうだ。

ロウニンアジ自体はこれまで3本釣っているのだが、サイズには恵まれていなかったので、ついに浮かせたGTと呼べるサイズにテンションが上がる。

空気を十分に吸わせ勝負あり。

「いよっしゃああぁぁぁやったぜふうううぅぅぅ」

などと、夜の堤防で1人叫びながらランディングポイントまで移動していると、フッとテンションが抜ける。

 

??????

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………

…………。

どおしてだよおおおおおおおおオォォォアああああ

 

フック折れ。

誰もが通る道なのだろうが、いざ自分の身に降りかかるとやっぱり悔しい。

悔しさのあまり、だだっ広い堤防で大の字になって寝転び天を仰ぐ。

皮肉にも見上げるとそこには満点の星空。

瞬く星々が悔しさに拍車をかける。

 

すぐに折れたフックを交換して再度キャスト。

数分の沈黙の後、なにやらヒット。

1匹目のギンガメアジよりは引きが強いがポンピングは軽い。

正体は70センチ強の可愛いロウニンアジ。さっきのGTの子供だろうか?

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その後もかなりの頻度でルアーに何者かのバイトが頻発したが、何故か全て乗らず。

辺りが薄明るくなり、鳥のさえずりが耳に入ってきだしてタイムアップとなった。

 

やっと浮かせたGTと呼べるサイズのロウニンアジ。あと一歩のところだったが、最後の詰め、今回は向こうに運があったのだろう。

気持ちを切り替えて、残りの島生活もストイックな釣り生活を送っていこうと、帰りの山道で思うのであった。

 

 

 

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カスミアジ

ロッド:ランナーエクシードファイナルスタンドアップ105bxh

リール:アベットラプター lx

 

ギンガメ、ロウニンアジ

ロッド:グランデージxd 100ex

リール:ツインパワーsw14000xg