備忘録

大きな魚を、磯から、ルアーで。 釣りに魅せられた20歳の学生が挑んだ半年間の備忘録です。~令和元年4-9月~

母島の釣り⑥

地磯は甘くない。

石垣島与那国島といった、比較的アクセスが楽な場所は勿論として、母島やトカラ列島などの、いわゆる"秘境"ですら、地磯で成果をあげるのは本当に難しい。

 

自分が現在滞在中の母島の場合、まず地磯へのエントリーが非常に難しい。山道を30分以上歩き、最後は崖を下る。

そこからさらに膝上まで海に浸かって磯に渡る場合もある。

毎朝2時半に起きて、往復1時間以上のトレッキングをするようなものだから、体力的に本当に過酷だ。

 

そうやって険しい道のりを経て磯に到着しても、魚からの反応はなかなか得られない。

母島の地磯の一番の特徴は、「まずめ一発」。

朝まずめ夕まずめのタイミングで、本当に一発だけチャンスがあるだけ。

 

だいたい週に5日くらいのペースで、2〜4人のメンバー(通称:母島M山釣り部)で朝まずめは磯に足を運んでいるが、5日のうち良い魚からの反応があるのは1日あるかないか。

しかもその反応がある日も、釣り部の誰かしらのルアーに一発出るとそれで終わってしまう。(大抵の場合Mさんのルアーに一発出る笑)

 

5日に1回魚から反応があるだけで、地磯としては素晴らしいポテンシャルだとは思うが、それでもやはり地磯の難しさを日々痛感させられる。

 

そんな中、やっと自分にチャンスが回ってきた。

 

6/8

中潮

満潮…8:28、23:00

干潮…15:39

 

この日は釣り部のIさんと共に、干潮のタイミングでしか入ることができない磯へと夕まずめの一発を狙いに行った。

 

このポイントは母島の磯の中でもエントリーが一番難しく、超急斜面の山道を登っては下り、藪を漕ぎ、海を渡り、最後は横這いになって崖をつたう。

 

行くまでに熱中症で本当に死にかねないので(滑落で死ぬ可能性もあるが)、リュックには水を3L。これまためちゃくちゃ重たい。

時々木々の隙間から見える景色に心癒されながら、1時間かけてポイントに到着した。

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(木々の隙間から。梅雨明けした小笠原の海は本当に綺麗だ)

 

 

ポイントに到着したのは15時半。丁度下げ止まりのタイミングだ。

魚のスイッチが入るのは、潮が上げ始める16時頃からだと踏んで、16時まで日陰で休憩を取る。(というか休憩を取らないと死んでしまう)

頑張って持ってきた2Lのポカリスエットが最高においしい。

 

美しい海を眺めてのんびり座っていると時間はあっという間に過ぎ、時刻は16時を迎えた。

上空にはカツオ鳥が何羽かいて雰囲気がいい。

 

地磯は飛距離がモノを言うので本当はpeの6号を巻いたスピニングタックルを使いたいのだけれど、現在修理に出しているためベイトタックルで。

飛距離を出すためにリーダーの長さは10メートルほどに抑えてある。

使用ルアーは内地の先輩から譲ってもらったS POP。

初めて使うルアーだったので、手探りで自分なりの動かし方を模索してみる。

ボゴッボゴッ、といった重低音なポップ音をだすビッグマウスなどとは違い、パシャパシャと軽快なポップ音を立てる。使い方としてはヤンバルアートクラフトのビギンなんかに似ているのかな?

 

などと、ルアーの動かし方に思いを馳せていると、突然大きく水面が揺らいだ。

 

乗った!

 

南国の魚にしては控えめなバイトだったので魚が食いついた事に気が付くのに少し遅れたのと、まだまだ慣れきらないベイトタックルであったのとで、追い合わせをうまく決められない。

が、運良く竿に重みはしっかりと乗ってくれて、ファイト態勢に入った。

初期ドラグは7kgに設定していたが、魚が止まる気配が微塵もないので、12キロくらいまで一気に上げる。

15メートルほど走ったところで止まってくれたので、ポンピングで寄せてくるものの、10メートル巻いては走られる、の繰り返し。

キハダやイソンボといった、猛スピードで突っ走る魚の引きとは明らかに違う。

この時点で、糸の先にいるのはGTだとなぜか自分の中では確信していた。

魚は斜め左方向のテラスに向かって走ろうとするが、竿のパワーがそれを許さない。

少し根ズレの感触が伝わってくるが、リーダーがもう見えるところまできていたので余裕を持ってファイトする。糸の先には青白い魚体がすでに見えている。

が、突然フッと竿から重みが消えた。

 

フックアウトだった。

 

(恥ずかしいので)感情はあまり表に出さないように日頃からしているのだが、悔しすぎて思わず声を荒げてしまう。

 

思えば反省点しかないファイトだった。

 

追い合わせを思うように決められなかったし、1時間の過酷な山道を経たため、ポンピングの時に下半身を十分に活かすことが出来なかった。

イソンボなどとは違い、キハダやGTは口が硬い。GTに関しては噛む力も半端じゃない。

やはり追い合わせの出来が命取りになる。

 

技術不足を痛感し、ひとしきり悔しがってから、日陰でリーダーを組み直す。(10メートル入れたリーダーは上から下まで毛羽立っていた)

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リーダーを組みながら、悔しさを噛み締め天を仰ごうとして後頭部を磯に強打(死ぬほど痛かった)したが、なんとかリーダーを組み終え釣りを再開。

するも、やはり地磯はまずめ一発。

その後は自分もIさんもノーバイトでこの日を終えた。

 

バラした個体はおそらく15〜20キロくらい。それなりのタックルでかければ高確率でランディングできるサイズだ。

千載一遇のチャンスを逃してしまったが、完全に自分の技術と体力不足が原因なので仕方がない。

尊敬する釣り師の

「近道などない。あるのはイバラ道だけだ」

という言葉を思い出しながら、今度サメを釣ってベイトタックルでの追い合わせ練習をしよう、とか考えながら、崖を登り帰宅した。

 

 

 

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GT(バラし)

ロッド:ランナーエクシード ファイナルスタンドアップ105bxh

リール:アベット ラプター lx

本線:pe8号

リーダー:ナイロン180lb